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国内朝鮮族への波及を恐れる中国

楊海英:静岡大学教授

楊海英(よう・かいえい)。1964年中国・内モンゴル生まれ。1989年に来日。国立民族学博物館などで文化人類学を研究。著書に『逆転の大中国史』『チベットに舞う日本刀 モンゴル騎兵の現代史』(ともに文藝春秋)など。(撮影:岡本裕志)

中国の民族問題や辺境問題に精通する楊海英氏に、朝鮮族を国内に抱え、北朝鮮問題が波及することを懸念する中国の内情を聞いた。

中国にとっては、200万人を超える朝鮮族がいる東北地方の延辺朝鮮族自治州の問題は切実です。国境を超えて、北朝鮮と韓国の情勢が、自国領内の少数民族である朝鮮族の動向に影響を与えることを北京(中国政府)は知っているからです。中国ではモンゴルやチベット自治区ですが、朝鮮族は人口も多く地域も広いのに自治州のままで、自治度は低い。朝鮮族自治区を求めましたが、北京が応じなかった歴史があります。

1950年代後半の反右派闘争や1960年代から70年代にかけての文化大革命でも朝鮮族のエリート層は多数粛清されました。文革時代、毛沢東のおいである毛遠新が遼寧省のトップとして派遣されており、粛清は毛遠新の指令でした。毛沢東に絡む問題になるので、共産党の歴史研究でも責任を追求できず、余計に根が深い問題になっています。

延辺朝鮮族自治州を訪問した習近平(シー・ジンピン)・中国国家主席新華社/アフロ)

北京の指導者は、自国の朝鮮族が、経済発展した韓国に憧れを抱いていることを知っています。北朝鮮も貧しい独裁国家ですが自分の国ではあるので、自治州よりいいと考える人が朝鮮族には多く存在します。朝鮮族の動向は中国にとって頭痛のタネです。彼らが分離独立を主張して朝鮮半島と一つになろうとしないか危機感を抱いているので、中国は朝鮮半島に単一政権ができることは望みません。朝鮮族が不安定化すれば、モンゴルやチベットウイグルにも波及し、辺境情勢が不安定になるからです。

中国の北朝鮮政策は、自国の辺境問題とつながっている(写真:AP/アフロ)

狙いは、半島分断という「現状維持」

中国の歴代王朝の対朝鮮半島政策は、影響力を維持するため、半島の政治勢力の分裂状態を望んできました。北朝鮮と中国は仲がいいかというと良くないし、好きかというと、嫌いです。しかし、延辺の朝鮮族を抱える以上、北朝鮮と韓国に、自治州を加えた「三国分裂状態」がいちばん望ましく、基本的には現状維持の姿勢です。

これに対して、北朝鮮が核を持つのは、日米韓への挑戦だけではなく、中国への対抗でもあります。北朝鮮は独自性を強調し、中国とも対等な関係を求めてきました。「血盟」は中国には都合のいい話ですが、北朝鮮には朝鮮戦争で守ってもらったという話で、それほど、ありがたい話ではないのです。北朝鮮が核を持てば中国は北朝鮮を無視できなくなり、延辺の朝鮮族を鼓舞することにもなります。ですから、北朝鮮は核によって中国と駈け引きしているのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーーー

https://news.yahoo.co.jp/feature/597