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桜の樹の下で

悪性リンパ腫

入院中化学療法を無事終えて退院し、

念のための放射線治療を通院で初めてから

体力低下予防のために

私たちのデートは歩くことが

多かった

大阪城近くにある病院から

よく訪れたのは

大阪城公園だった

病院の帰りに

ランチを食べてから

桜のころの大阪城公園

本当に美しかった

ねぇ

あの樹の下で横になろうよ

と彼

服が汚れちゃう

というと

いいから

と彼の腕枕で

大きな桜の下で大の字で横たわった

満開の桜から

桜の花吹雪が舞い散った

樹の下で横たわりながら

桜の花びらが舞い散る姿を

眺めてると

嫌なことが全て忘れられそうだった

複雑な人間関係

亡くなって行った患者さん達との別れ

全てが煩わしくて

看護師を辞めてパン屋で働き始め

こうして

美しい花吹雪の下

大きな腕に抱きしめられて

不思議なつながりで

こうして巡り会えたこと

この全てが安息の場所であり

穏やかに流れる時間を取り戻した

幸せ

という言葉があるならば

こういうことをいうのだろう

このままで

ずっと

ずっと

手のひらで花びらを掬いながら

彼は何を感じているのだろうかと

隣にいる彼をみつめると

優しい柔らかな表情で私をみつめ

腕の中に包みこんでくれた